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水戸の徳川様と丹波の黒豆

 丹波黒豆の歴史は三百年以上前に遡りますが、その記録は実は水戸のお城にあります。常陸水戸藩第二代藩主の徳川光圀公(水戸黄門様)が元禄十一年(1698年)十二月二十三日、丹波篠山から献上されてきた黒大豆を水戸特有の糸引納豆にして召し上がられたという記録です。
 その後、常陸水戸藩第九代藩主・徳川斉昭は、後に江戸幕府最後の十五代目将軍となるその息子慶喜に「長命の秘訣は毎日百粒の黒豆と牛乳を飲むこと」との書簡を残しております。徳川慶喜は江戸時代最も長生きした将軍ですので、大変興味深い記述です。
 この長命の秘訣は、本年度のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の第一話でも取り上げられ、慶喜が黒豆を食べる場面がありました。実は、その「青天を衝け」の題字は、小田垣商店本店第一期改装の設計・監修をしていただいた世界的に著名な芸術家である㈱新素材研究所の杉本博司さんが書かれており、水戸の徳川様を介した黒豆のご縁を感じる次第です。
 小田垣商店は古い国登録有形文化財の建物を未来へ遺し、黒豆文化を後世へ繋げるため、古いモノを大切に古く戻すことをコンセプトに本店をカフェ併設の新しい空間へ改装いたしました。
 いつかコロナ感染が終息した後、直島のように丹波篠山を目的に世界から芸術ファンや観光客が集まり、丹波の黒豆の素晴らしさを知っていただけるよう、微力ながらも取り組んでいきたいと願っております。

高41回 小田垣 昇(株式会社小田垣商店 代表取締役)