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不思議な巡り合わせ

 思えば、不思議な巡り合わせです。
 仏教美術、主に中世の仏画の絵解き研究を専門にしておりました。国際日本文化研究センターに設置された総合研究大学院大学で学位を取ったあと、非常勤で食いつないでいたのですが、ご縁があって京都西山短期大学に来たのが15年前のこと。新たに仏教保育専攻を立ち上げるということで、その準備段階から参加させていただきました。関山和夫先生が学長を務められていたころです。
 祖父の母校に奉職できることは嬉しかったのですが、それから昨年の春まで、私自身が学長に任じられるとは思いもよらぬことでした。理事会での決定をお受けし、謹んで拝命しましたが、就任後一年を経た今も、身が引き締まる思いでいます。
 未だ先の見通せないコロナ禍が続いています。リモート授業のあり方、入学試験、学園祭、保育・教育実習など、例年とは異なる対応が増えており、学生だけでなく、多くの方々のこ協力を頂戴しています。山ほどのチェックリストをみてへこんでいる学生に「こんな学べるチャンスないよ」って実習に学生を送り出しているのですが、内心はヒヤヒヤです。
 コロナ禍で少しいいこともありました。卒論の指導をされている先生が、「前期はとくに十分な指導ができなかったけど、例年よりも充実した論文が多かった」とおっしゃってたことです。
 学生が交わりを断って引きこもった分、充実した成果を得られるというご報告でした。自身を顧みても、非常勤で食いつなぐ雌伏の時代があったからこそ、論文が書けるようになった。逆に言うと四六時中考えてないとまともな論文は書けないということでしょうか。
 冬の時代を経て、桜咲くこともあるということを再認いたしました。

加藤善朗(高34回)

Profile 

1964年、兵庫県生まれ。総合研究大学院大学国際日本研究専攻博士課程修了。博士(学術)2002年、鎌倉時代の涅槃図研究で佐和隆研賞を受賞。日本学術振興会特別研究員、龍谷大学講師を経て、2005年に京都西山短 期大学の教授に就任。 今年度から学長に 就任。